子の親権や養育費の確保について|離婚を前に最優先にすべきことは?その準備は?手続きの方法は?
手放した親権を取り戻すことは難しい
子のいる夫婦は婚姻中は、父母ともに親権者(共同親権)です。しかし、離婚することで、親権者は父か母のどちらかに限られることになります(単独親権)。血の繋がりは消えませんから、親の立場が揺らぐことはないのですが、親権者と非親権者の違いは、生活における子どもとの関係性において、決定的な差があります。そのことに、親権を失ってから気付かれることは、結構あります。
とにかく離婚したいということで、離婚の成立を急がれるケースに多くあると思います。確かにDVなどで身の危険が切迫しているような緊急を要する場合は、何より先に離婚を成立させたいと思われるかもしれません。しかし、DVの場合でも別居したり、シェルターに避難などすることで、身の安全を守る方法はあります。
親権については、離婚する相手方(元の配偶者)に渡ってしまうと、これを取り戻す(親権者を変更する)のは、何大抵のことではありません。そもそも、親権を確保できなかった要因を取り除き、さらに、相手方よりも自分が親権者であることが、その子の養育にとって有益だと言うことが証明できなければなりません。
政府は今後について、離婚後の親の共同親権の議論を始めていますが、法改正されるとしても、まだ先の話です。今、離婚が頭によぎる方にしてみれば、いつ変わるかも分からない制度を待つのは、あまりにも不確定すぎますし、根本の解決にはなりません。残念ながら今は、現行の制度と向き合うしかないのです。
とりあえず離婚してから話し合うというアドバイスは無責任!
希に、「まず離婚してから考えたらええやん」というような事を言う人がいらっしゃるようですが、私は支持できません。離婚するというカードが無くなった状態で、どのようにして協議をするのでしょうか。そもそも相手方が、話し合いの場に立ってくれるかも、分かりません。離婚が成立したということは、離婚届が提出されたことを意味します。この書類は当然に、夫婦どちらも署名・押印が必要です。離婚届には、親権者を夫か妻に定める項目があり、ここが空欄では役所は受理してくれません。相手方からの署名・押印を貰うために、ひとまず親権者を相手方にして、後から親権を取り戻すなんてことは、まず無理と考えてください。そんな簡単なものではありません。もし一度でも、親権者を相手方にすることを認めてしまえば、その事実は決定的なものとなります。
子どもの意思は、最大限に尊重されるべき!?
子は親が離婚して欲しくないために、それを阻止する行動に出ることがあります。例えば、妻(母親)が離婚を望んでいた場合、子は父親と暮らしたいと言うかもしれません。母親の心変わりを期待する、もしくは決断を覆らせたいからです。これを鵜呑みにして親権が夫(父親)になる離婚届を提出したなら、離婚は出来ますが、これが本当に子にとって望ましい状況になるでしょうか。私は、親権者は父親よりも母親が望ましいなんてことを言っているのではありません。性の違いによらず、子を養育するのに望ましい親はどちらであるのか、それを柱に冷静に、親権者をどちらにするべきか当事者である大人が、子のために適切に判断する必要があると思うのです。子の意思は当然に尊重されるべきではありますが、離婚の後に本当に適切な養育環境となることを第一にするべきではないでしょうか。
とは言っても、離婚は綺麗事や理屈ではありません。そこには、人として男女として感情が入り乱れます。結婚も離婚も紙切れ一枚だと言えばそれまでですが、離婚に向き合うことは結婚など比較にならないほどの、覚悟とエネルギーが必要になります。
来たるべき日に備え、粛々と準備をするのが賢明
離婚は相手方との争いがなければ、悩むことも苦労されることもありません。また専門家がサポートすれば、円満に離婚できるとは限りません。そこに人として家族としての感情があるからです。しかし、相手方との意見の相違が決定的になる前なら、専門家からのアドバイスにより、明るい兆しが見えたり、今すべきことが見つかるかもしれないのです。円満な離婚には、周到な準備が欠かせないのかもしれません。
- 子の親権は、確保できそうですか?
- 離婚後の収入で、生活できますか?
- 新たな生活の場は確保できますか?
- 住宅ローンや借入金はないですか?
- 養育費は支払われる見通しですか?
- お子さんの進学はどうされますか?
- 悩み等相談できる存在はいますか?
- 両親の老後はどう考えていますか?
相手との取り決めは、離婚給付契約書で!
約束事は、必ず書面(離婚給付契約書)でしておきたいですね。できれば離婚給付契約公正証書が望ましいです。
まとめ
やはり何より、お子様との関係性を大切に、これからの生活がお互いに実りあるものとなるよう、必要であれば来たるべき日に向けて、その準備を始められてはいかがでしょうか。