契約の効力と効果|締結の際の注意点について
「契約」について
さっそく、考えてみましょう。
身近なところでは、「切符を買って電車に乗る」こと、さわだ書店で、「予約した本を買う」こと、さわだ行政書士事務所で「相続の手続きを依頼する」こと、これも立派な契約です。
でも、契約といえば、重要な取引きや約束の際に行われるのが一般的で、契約書に署名押印するイメージだと思います。
契約書とはご存じの通り、その契約内容を明確にするために契約当事者の間で作成する書面のことを言います。
日本の法律では、一部の例外を除いてそのほとんどは、口約束つまり口頭での合意だけで、契約は成立します。
しかし、書面にて契約の内容を明らかにしておかなければ、契約の内容を証明するものがないために、紛争を事前に回避することができません。
そのために、特に商取引においては当然に、契約書の締結が行われています。
日本では商取引は、民法、商法と会社法によって一般法と特別法の関係で法整備されているほか、商慣習についても通例尊重されるべきものとされています。
しかし、その一方で、「契約自由の原則」が認められています。
一部の強行規定等を除けば、どのような契約であっても、その当事者が納得して合意しているのなら、それを積極的に認めようという考えです。
もちろん、このことは、契約書にて明記しておく必要があります。
これを、経営の現場において考えた場合、「契約自由の原則」には、注意が必要です。
なぜなら、日本はその99%以上が中小企業とされていますが、仮に新規事業を始められる場合なら、事業の実施および継続のため取引をする相手方は、自社よりも経営規模が大きく、経験も実績もあるような会社なのが通常だと思います。
フランチャイズに加盟するときなどは、その最たるものです。
この場合、力関係や立場から考えると当然のように、契約書を作成するのは、その相手方になるでしょう。
そして、その契約内容は、相手側が不利益を被ったり損害が発生しないような内容になっていることが多いでしょう。
だって、自己に少しでも有利な条件で、誰しも取引きしたいですから。
ここで重要なのは、その契約書の内容を正確に読み込むこと、読み込めることです。
内容をよく理解しないままに署名押印をしてしまうと、法律で排除される強行規定違反や公序良俗に反する等の内容でない限り、「契約自由の原則」により、契約内容は有効になります。
では、契約書の内容に、こちら側に不利な条項があって、それが納得できない場合には、どうすればよいか、考えてみましょう。
おそらく、相手側との力関係から、こちらが契約内容の文言の修正を求めたとしても、相手方は応じないと思います。
相手方は、「契約内容に不満があるなら契約しないよ」と言うだけですから。
しかし、相手方も商取引を開始することにメリットがあって、契約をしたい意思はあるはずです。
それならば、契約書(原契約書)はそのままに、これに付属する「覚書」をこちらが作成してみてはどうでしょうか。
覚書にある規定については契約書に優先させておきます。
こちらから提示した覚書とセットなら契約すると持ち掛ければ、相手側としても、原契約書はそのままに契約ができるのですから、覚書を作ることで、契約締結に向けてハードルは少し低くなるのではないでしょうか。
一方、現在すでに締結している契約書はどうでしょうか。
署名押印している以上、その契約は有効とされますから、契約に定めた条項を変更したいのなら、それについて見直す契約(変更契約)を新たに行わなければなりません。
契約は当事者間で合意することで成立しますから、この変更は容易ではないでしょう。
では、すでに締結している契約にあって、その条項にはないけれど、取引の継続を条件に不利な扱い又は不当な要求を相手方から受けたらどうでしょうか。
これは、「優越的地位の濫用」にあたると考えられます。
このような不当な扱いは、独占禁止法に違反しますから、公正取引委員会により排除されます。
毅然とした態度で臨み、場合によっては弁護士の先生の力を借りることになるでしょう。
ここで重要なのは、それを専門とする弁護士さんを選ぶことです。
民事裁判は、 私人(個人や法人)が私人を訴えて裁判所に紛争の解決を求めるものですから、裁判に勝つための証拠集めや資料の提示は、原告側が行う必要があり、専門的な知識が求められます。
弁護士さんの力をお借りしなければ、相手方企業に勝てるものではありません。
力が強い弱いに関係なく、対等な立場で取引することを守ってくれるのが法律です。
商売をするのは生きて行くためでもありますから、自己の利益と権利は適正に守られるべきだと思います。
まとめ
私も「さわだ書店」と「さわだ行政書士事務所」の経営に携わっていますので、事業をする上で「契約」の重要性は、身に染みていますし、注意すべきことも見えます。
この経験を、私が作成する契約書や覚書にも、存分に生かすよう、務めています。