不動産の権利書について|再発行できるの?記載が間違っていれば訂正はしてもらえるの?
お手元の権利書の内容は正しいですか??
土地や建物の権利書(登記済権利証書・登記識別情報)の記載が間違っている、なんてことがあるのでしょうか。
でも、実際に有り得ました。
私が遭遇したのは、土地の権利書において地目が「畑」、登記簿上は「山林」でした。
正しいのはもちろん、登記簿です。
その証拠に、過去の登記簿(閉鎖された登記簿)も、昭和初期の分筆前までも遡って徹底的に調べましたが、一度も畑の地目として記載されたことはありませんでした。
それにも関わらず、平成の時代に相続手続きをした時の権利書が「畑」なのは、道理が通りません。
この権利書(法務局でコンピュータ管理化される前のものでした)の記載が間違っているのは、明らかです。
では、なぜこのような間違いが生じたのでしょうか。
ミスが次のミスを生む
おそらく、1つのミスが見過ごされ、その後も偶然が重なり、遂に発見されることなく、今日まで権利書の内容が間違っていたと考えられます。
根本の原因は、行政の管理システムの移行による誤記が発端だと思います。
なぜなら、市区町村が発行する「固定資産評価証明書」における登記簿上の記載が、「畑」になっていました。
固定資産評価証明書は固定資産課税台帳の情報から作成されるものですが、その根本のデータは、法務局が管理する登記簿の情報を基にしています。
あくまで根拠は登記簿にあって、逆は有りません。
つまり、登記簿の情報と照合して市区町村での記載が間違っていれば固定資産課税台帳が修正されることはあっても、登記が誤っていると市区町村が指摘して登記簿が修正されることはありません。
この慣例から、登記情報は真正なもので、その情報が正しく市区町村に伝わっていない、もしくは市区町村で間違って記録されたと考えられます。
その原因として有力なのは、登記情報を取得したとき、もしくは市区町村がコンピューター管理されるとき、そのタイミングでミスが生じたことです。
市区町村の職員が課税台帳に入力する際の人的なミス、つまりヒューマンエラーが原因ではないでしょうか。
昭和から平成にかけて、行政が持つ情報はコンピュータで管理されるようになりました。
管理するのはコンピュータですが、そのためにデータを入力するのは、人間です。
膨大な情報量を人の手で入力する際に、ミスが生じることは、まあまあ有り得ますよね。
人的間違いが、次のミスに繋がる
今回の場合、さらに不幸が重なったのは、この土地が現在の所有者になる移転登記のときに、その間違いに気付かなかったことです。
司法書士の先生によると通常であれば、権利書の元となる書類を作成するときは「登記簿から」情報を取得するそうで、固定資産課税台帳の間違いを簡単に発見できるはずです。
しかし、おそらくですがこの権利書の作成者は、その間違っている固定資産課税台帳の情報(名寄帳など)を閲覧して、書類を作成したのではないでしょうか。
間違った情報を転記したら、間違いに気づくはずもありません。
そしてさらに、不幸な偶然は続きます。
その誤った記載の書類は所有権移転登記の申請の際もそのまま、運悪く法務局の担当官の確認(照合作業)をすり抜けてしまい、その結果、権利書での記載の誤りが見過ごされてしまった可能性が考えられます。
もしこの段階で法務局が間違いに気付けば、権利書に訂正などが加えられているはずです。
しかし、権利書に訂正跡はみられません。
このように考えれば、この現象に納得ができますし、整合性が取れます。
記載ミスは「まあまあある」の?
私が提携している司法書士の先生に聞いたところ、「このケースは、まあまあ、希に無くはないかな」とおっしゃっていました。
特に相続の手続きのときは、起こりえるそうです。
田舎の場合、田や畑、山など多くの物件を一度に相続します。
登記簿を一つずつ確認するのは面倒なので、固定資産課税台帳(名寄帳)の情報は一覧で表示されていますから、その一覧表を見て登記申請書類を作成すれば、楽なのだそうです。
にわかに信じられないですが、ちゃんと確認はしてもらいたいものです。
もちろん、私が仕事をお願いしている司法書士の先生は、絶対にそんな手順は踏まないとおっしゃっていました。
作業の効率を優先することは否定しませんが、その分、確認作業は念入りにお願いしたいですね。
お陰で今回は、登記申請をお願いした司法書士の先生には、ご苦労をお掛けすることになりました。
権利書と登記簿の地目の記載が異なるのは、大きな問題です。
例えば今回の場合なら、権利書にある「畑」の表示が否定できなければ、所有権移転のため農地転用や非農地証明の提出が求められる可能性があるからです。
スムーズに所有権移転登記が行えないことも想定されます。
まとめ
「権利書の内容が間違ってるやん!」と言うことには、ちょっと驚きです。
絶対って、ないのですね。
ちなみに、上記の案件は私の事務所を管轄する行政庁及び関係機関とは別の地域で発生していることを、あらかじめお断りしておきます。