優越的地位の濫用は独占禁止法に抵触する恐れがある!?

2022年2月10日

取引先から”優越的地位の濫用”による不当な圧力を受けていませんか?

私の知人の話ではありますが、行政書士も携わる関係の会社の経営において、気になる内容だったので書き留めておきます。

その方は個人事業主(Aさん)なのですが、取引先(B社)から一方的に契約の更改(これまでの契約を破棄して新たな契約を結ぶ)を迫られて困っているとのことでした。

その職種についての公表は差し控えますが、取引先は国内における市場シェアの30%を超える大企業だそうです。Aさんは、契約をやりなおさない場合、B社から取引を中止されるのではないかと心配されています。しかし、現在有効のB社との契約書には、契約解除の条項がありません。

取引先からの圧力は違法?

AさんはB社からの要求に応じる必要があるのでしょうか?

この場合、「独占禁止法」に抵触するかどうかが問題になると思います。

独占禁止法とは

独占禁止法の正式名称は,「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。この独占禁止法の目的は,公正かつ自由な競争を促進し,事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。市場メカニズムが正しく機能していれば,事業者は,自らの創意工夫によって,より安くて優れた商品を提供して売上高を伸ばそうとしますし,消費者は,ニーズに合った商品を選択することができ,事業者間の競争によって,消費者の利益が確保されることになります。このような考え方に基づいて競争を維持・促進する政策は「競争政策」と呼ばれています。
また,独占禁止法の補完法として,下請事業者に対する親事業者の不当な取扱いを規制する「下請法」があります。

(公正取引委員会のホームページから)

つまり、国としては企業間の取引は消費者の利益のため、あくまで市場原理を優先し尊重しますよと言っています。でもその一方、取引先との力関係により、対等な立場で取引することを阻害するような行為についても、独占禁止法において問題としています。

流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針

今回のAさんの場合、この指針の「第3 単独の直接取引拒絶」に該当すると考えられます。

第3 単独の直接取引拒絶

1 考え方

事業者がどの事業者と取引するかは,基本的には事業者の取引先選択の自由の問題である。事業者が,価格,品質,サービス等の要因を考慮して,独自の判断によって,ある事業者と取引しないこととしても,基本的には独占禁止法上問題となるものではない。
しかし,事業者が単独で行う取引拒絶であっても,例外的に,独占禁止法上違法な行為の実効を確保するための手段として取引を拒絶する場合には違法となり,また,競争者を市場から排除するなどの独占禁止法上不当な目的を達成するための手段として取引を拒絶する場合には独占禁止法上問題となる(注4)。

(注4) このような行為によって,市場における競争が実質的に制限され,私的独占として違法となる場合の考え方については,排除型私的独占ガイドラインによって,その考え方が明らかにされている。

2 独占禁止法上問題となる場合

事業者が,独占禁止法上違法な行為の実効を確保するための手段として,例えば次の[1]のような行為を行うことは,不公正な取引方法に該当し,違法となる(一般指定2項(その他の取引拒絶))。
また,市場における有力な事業者(注5)が,競争者を市場から排除するなどの独占禁止法上不当な目的を達成するための手段として,例えば次の[2]~[3]のような行為を行い,これによって取引を拒絶される事業者の通常の事業活動が困難となるおそれがある場合には,当該行為は不公正な取引方法に該当し,違法となる(一般指定2項)。

[1] 市場における有力なメーカーが,流通業者に対し,自己の競争者と取引しないようにさせることによって,競争者の取引の機会が減少し,他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるようにするとともに,その実効性を確保するため,これに従わない流通業者との取引を拒絶すること(一般指定11項(排他条件付取引)にも該当する。)

[2] 市場における有力な原材料メーカーが,自己の供給する原材料の一部の品種を完成品メーカーが自ら製造することを阻止するため,当該完成品メーカーに対し従来供給していた主要な原材料の供給を停止すること

[3] 市場における有力な原材料メーカーが,自己の供給する原材料を用いて完成品を製造する自己と密接な関係にある事業者の競争者を当該完成品の市場から排除するために,当該競争者に対し従来供給していた原材料の供給を停止すること

(注5) 「市場における有力な事業者」の考え方については,前記第1部の3(4)において述べた考え方と同様である。

(「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」から)

また、そもそも、「市場における有力な事業者」によって競争原理が損なわれるような行為が行われた場合には、独占禁止法上の問題として問われる可能性があります。

ここで言う「市場における有力な事業者」と認められるかどうかについて、同じく指針の中で示されています。

「市場における有力な事業者」と認められるかどうかについては,当該市場(制限の対象となる商品と機能・効用が同様であり,地理的条件,取引先との関係等から相互に競争関係にある商品の市場をいい,基本的には,需要者にとっての代替性という観点から判断されるが,必要に応じて供給者にとっての代替性という観点も考慮される。)におけるシェアが20%を超えることが一応の目安となる。ただし,この目安を超えたのみで,その事業者の行為が違法とされるものではなく,当該行為によって「市場閉鎖効果が生じる場合」又は「価格維持効果が生じる場合」に違法となる。
市場におけるシェアが20%以下である事業者や新規参入者がこれらの行為を行う場合には,通常,公正な競争を阻害するおそれはなく,違法とはならない。

(「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」から)

Aさんの場合、取引先(B社)の国内における市場シェアは30%以上ですから、これに該当します。

その「市場における有力な事業者」から、契約をやりなおさないことに端を発して、例えばいやがらせとか、取引停止により事業が継続できない事態になったとすれば、まさしく「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」に該当する事例になると思います。

仮にB社と取引ができない状況になった場合、市場の寡占の問題で他の取引先が新たに取引に応じてくれないことが、大いに想定できるからです。このような事態になれば、Aさんは事実上の廃業です。

公正取引委員会は、Aさんのような立場を守る姿勢を指針で明示しています。

 

もし同じような事例で困った時は、弁護士に相談をする、もしくは、中小企業庁が所管する「下請かけこみ寺」に相談してみてください。

下請け関係以外でも、中小企業の取引上の悩みの相談に乗ってくれますよ。

下請かけこみ寺

まとめ

契約は、あくまで当事者同士が”対等”な立場で合意するものです。圧力には屈せず、正当な主張をして経営を守りましょう!

実際に損害が生じた場合には、損害賠償請求も視野に入れるべきだと思います。

企業間のトラブルで困った時は、弁護士か中小企業庁ですよ。

下記の私の記事も参考にしてみてください。

参 考 記 事

 

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