成年後見制度について|超高齢化社会における認知症の発生リスクに備える
成年後見制度を考える
先日、新聞を読んでいると、「高齢の方は賃貸住宅に入居しにくいことがある」という記事を見ました。
オーナー(大家)さんが嫌がることがあるらしいのです。
亡くなられた後のことに理由があるようで、身内がいらっしゃるといいのですが、単身の方の場合、お葬式を出したり、家財の処分など、大家さんが負担になることを想定されるようで、できれば若い元気な方に入居してもらいたい要望があるそうです。
分からなくはないですが、切ない話ですね。
おそらく、面と向かって断られることなく、なんとなくそれとなく、契約しないのでしょうね。
ご本人からすれば、財政的な理由や、飼っていたペットを連れて入居できないことなどで断られるなら仕方ないと納得もできますが、自分の老い先を理由に拒まれ住むところがないのは、辛いです。
認知症の場合は成年後見制度の検討を
では、この状況を乗り越えるには、どうすればいいのでしょうか。
その一つの答えは、成年後見制度を活用できないか、検討をすることだと思います
成年後見は、例えば認知症など、自己弁識能力と言われる判断能力の著しい低下があった時に利用できる制度だと思われていませんか?
もちろんそれも想定されていますが、将来に備えて利用することができます。
任意後見制度では、健康なうちからご本人と契約をすることで、もし認知症が発症すればその時点から契約の効力を発生させることができるうえ、後見人ができる権限もご本人の希望される範囲で付与することができますから、老後において生活が心配であれば、後見人に見守りや財産管理を行ってもらうことができます。
死後事務委任契約も併せて検討を
その際に、死後事務委任契約も一緒に結んでおけば、ご本人が亡くなられた後は、後見人がお葬式を出したり永代供養の手続きをしたり、家財の処分をしてくれます。
これで、大家さんの心配はなくなりますよね。
入居した後についても、契約している任意後見人がいることで、もしもの時があった時には、後見人が契約など手続きを行ってくれますし、認知症などで入居した賃貸物件では生活できない状態になった時にも、後見人はケアマネージャーなどと協議をして、ご本人に代わり福祉施設への入居の道を探すなどすることになります。
成年後見といえば、権利をはく奪されるようなイメージがありますが、任意後見という選択肢はあくまで将来への備えであって、ご本人が心身ともに健康な状況の間は、能力や法律行為が制限されるようなことはありません。
後見人には法定後見と任意後見の2種類があることを、ぜひ知っておいてください。
もし、現在において認知症を発症されているのであれば、ご本人に代わり法定後見人の存在が必要になります。
なお、後見人の選任は、家庭裁判所に申立ててから数か月を要しますので、ご注意ください。
かつては身内が選任されることがほとんどでしたが、この近年は専門職従事者である職業後見人の就任が増えてきています。
まとめ
超高齢化時代の認知症、お一人様の問題は、他人事ではありません。その備えが大切です。
「遠くの親戚より近くの他人」ではありませんが、身のまわりのことや財産管理を任せるのですから、第三者の誰でも良いというものではないからでしょうね。
この国が世界に誇れる社会福祉立国となるには、成年後見制度に代表される支え合いの仕組みが重要だと思います。