意識不明の配偶者と離婚できるの?その方法と問題点は?
勝手に離婚届を出した場合は、どうなるの?
以前テレビで放送されていたドラマを見ていて気になったことがあります。
ドラマの設定としては、「30年間、意識不明のまま入院していた夫が目を覚ました(意識が戻った)ら、妻が別の男性と結婚していた。夫はめっちゃショックだった。」という設定です。
確かにそうですよね。
目を覚ましたら妻が他の男性と新たな生活をしていたら、普通ショックですよ。
このドラマの設定は現実問題として、「離婚できるのかなあ?」、というところです。
倫理面と法律面で、かなり難しいのではないかと思います。
夫は意識がないので意思を行使することができず、当然に離婚届には署名押印ができません。つまり法律行為ができないのです。意思能力のない方に法律行為による効果を及ぼす方法としては、「成年後見人制度」を検討することになります。
成年後見人を選任すれば離婚できるのか?
成年後見人を選任してもらい、夫に代わって代理行為を行う必要があると思うのですが、ドラマでは、「妻は夫の回復を願っていた」というのです。
成年後見人の選任申立ては本人もしくは配偶者、四親等以内の親族が行うことになりますので、当然ながら、新たな夫となる人物が申立てをできるはずもなく、妻となる人物を説き伏せて成年後見人を選任したのでしょうか?
それとも、夫の親や兄弟に依頼したのでしょうか?
このケースで市町村長が申し立てるはずもありませんし。
これって、結構なハードルですよね。
しかも、意識不明の夫との間には子供がいて、その子には実の親のことを内緒にしてきたそうです。
ここまでするとなると、人として気持ちの面からもどうなんだろう?と思います。
そこまでして離婚すれば、親族など周りの人たちの賛否は分かれるでしょう。
気持ちは分からなくもないですが、夫がこの状態で成年後見人を選任することは、家庭裁判所はどのような判断をするのでしょうか?
選任する目的が、「意識不明で入院している夫との離婚」であるのなら、その者の看護を今後誰が行うのか、不安定な状態になることを裁判所が認容するのか、疑問です。裁判所は、後見される人(この場合は夫)の利益を絶対確保することを許可の判断基準とするからです。
妻(夫)との協議離婚が無理なら裁判しか方法が無い
残された選択肢は、裁判に訴えて離婚する方法のみです。意識不明になる前に、離婚の事由があったなどの要件も必要になるでしょう。
ドラマとはいえ、もう少し現実的な設定が良かったんじゃないのかなと思いました。
これじゃあ、「夫婦のどちらか一方が望めば簡単に離婚できますよ」と、安易な意識を促すだけじゃないのかな。
病気や事故という不可抗力で生じた事態という設定を、もう少し大事にして欲しいです気がします。
どちらか一方は離婚する意思がないのに、それでも「離婚」しようとするのって、現実的には簡単ではないですよ。
意識不明の配偶者を代筆して、一方的に離婚届を出したらどうなるの?
離婚届に不備が無ければ、役場では受理されます。本人の意思確認もされません。
しかし、意識不明ということは、病院に入院するなどして、医療関係者や社会福祉関係者が何らかの形で関わっていると考えられます。
その際に、離婚の成立を理由に夫婦関係を解消した、もしくは扶養や介助負担や義務から逃れたことを主張できるか、ということが問題になります。
結論から言えば、離婚そのものを否認される可能性があると考えられます。
離婚は身分関係上の法律行為です。これは当事者の意思決定により成されるものですから、意識不明ということは即ち、意思能力・判断能力がないという状態ですから、法律行為ができません。このような状態で法律行為に基づく書類を作成しても、その効力は生じません。無効になります。
さらに、離婚届という公文書を偽造したことになりますので、この罪に問われる可能性が生じると考えられます。
そして何よりも、意識不明の配偶者に成り代わり、離婚届を代筆して縁を切るという行為は、その人の倫理感、倫理意識を問われる問題です。
まとめ
意識不明の配偶者とは、原則として通常は離婚できません。裁判にて離婚を認めてもらうほかありません。
フィクションとはいえ、そのあたりも誤解を生まないようにしなければならず、マスコミは大変ですね。