職権削除とは|住民登録抹消・住所不定になれば給付金・住民税・保険証はどうなるの?住民登録を復活させる方法は?
職権削除(職権消除)とは、住民登録において行政が抹消する行為のこと
もちろん行政が勝手に住民の登録を抹消するなんて、は普通はありませんのでご安心ください。
だって、例えば行政が、「住民税の支払いを拒む人は、うちの自治体には必要ない。だから登録抹消だ!」なんてことしたら、大問題ですよ。
もちろん、そんなことはできません。
でも、現実的には、何らかの理由を持って、自治体が特定個人の住民登録を「職権削除」することは行われています。
それって、文字通りの職権濫用??
いえいえ、特別な理由がある場合に限って、認められている行政手続きです。
たとえば、住民登録されている住所地に、実際に住んでいない住民がいるとしますよね。
その場合、行政の判断においてその誤りを正す必要が生じれば、自治体は居住の実態を調査することがあります。
ただし、職員の独自の判断基準で住民登録の抹消が行われたのでは、居住者が行政サービスを適切に受けるという権利が侵害される恐れがあります。
そのために、自治体では「住民基本台帳実態調査に係る事務取扱要領」を制定し、その条文には、住民登録の職権削除を行うための要領が明確に定められているので、自治体はこれに従って、手続きを行います。
自治体はこの要領に反して、住民の居住実態の調査や職権削除を行うことはできないのです。
なお、自治体が居住に関する実態調査を実施するには、次の要件を満たすことを必要とする場合が一般的のようです。
(1) 住民から届出があった場合において、その届出が事実に反する疑いがある場合
(2) 首長(市町村長)が、その責務を管理執行するに当たり、または委員会等他の行政機関から通知もしくは通報を受けた場合において、住民票の記載事項に事実に反する疑いがある場合
(3) 首長(市町村長)が特に必要と認めた場合
その調査の結果、住民登録抹消の必要があると判断されれば、職権にて削除が行われます。
「戸籍の附票」にも「職権削除」と記載されます。
これにより、名実ともに「住所不定」となってしまいます。
住所不定では、現在の本当の住所にて住民登録の申請を自分で行わない限り、当然ながら行政サービスは受けられません。
病院に行くにも、保険の適用が受けられないので、治療費は全額の支払いになります。
印鑑登録もできませんから、印鑑証明書が必要な重要な契約も、できなくなります。
生活する上で支障を来すことはもちろんですが、住民登録をしない、もしくは居住している実態を正確に登録しないことは、法律(住民基本台帳法)に違反する行為です。
罰則を科されることもありますので、引っ越しをしたら、忘れずに14日以内に自治体へ転入届を提出しましょう。
自治体からの手厚い行政サービスを受けるのは、居住者の権利です。
そのためには、住民税などの納税は義務として、必要なことですね。
税金面は、どうなるの?
市民が支払う税金の主なものは、
- 所得税
- 市民税
- 府民税
- 固定資産税
所得税は国税で、市民税と固定資産税は市町村民税、府民税は都道府県税です。支払う先の機関が違うのです。
さらに区別すれば、固定資産税は不動産(土地・建物)を所有している場合に課税されます。なので、住民登録とは無関係のものです。所有者の居所に関係なく、不動産がある管轄の市区町村役場に納税する義務が生じるからです。
一方、所得税・市民税・府民税は個人の収入(所得)に応じて課税されます。さらに言えば、所得の額に応じて納税額は変わってきますから、収入が基準以下であれば、非課税となって課税されません。また、保険や様々な控除、例えば「ふるさと納税」や「iDeCo(確定拠出年金)」などを行えばこれらの税額から減額される制度もあるので、住民登録をしているから必ず、納税額が生じるものではありません。
つまり、住民登録をすれば税金が発生するという、単純なものではないのです。また、住民登録をすることは、法律で義務付けられていますので、引っ越しなどで転居した場合、同じ市区町村内であっても、転居から14日以内に役場に住民異動届(転居届)を提出しましょう。
収入を得ながら住民税を払わない方法ってあるの?
残念ながら、ありません。
会社員であれば、会社から給料をもらう際に「源泉徴収」をされます。 所得税の税額は会社の年末調整により確定されますが、さらに会社は都道府県にも年末調整の結果を提出しますから、自動的に住民税(市民税・府民税)も計算される仕組みになっています。会社が行う年末調整では、従業員の住所(居所)も届出ます。よって、この時に仮に住民登録が抹消されていたとしても、居所の所在地である市区町村は住所を知ることにより、自治体は課税をするのです。
自営業であれば、年間20万円を超える売上げ(収入)があれば、確定申告(税務申告)を毎年行うことが義務付けられています。これをしなければ、法律違反になり、大きなペナルティがあります。税務署による調査が入ることもあります。確定申告により、税務署はもちろん、市区町村は収入の事実から課税をするのです。
住所不定では保険証も使用できない
住所不定ということは、住民登録ができていません。つまり有効な国民健康保険証を所持できないことになります。病気などで医療機関を受診する場合、無保険状態となります。
新型コロナウィルスによる給付金が受給できない!?
2009年のリーマンショックによる景気対策の際には、「定額給付金」の制度が実施されました。この時は、住民登録を基に申請書を世帯主に郵送する方法が採られました。世帯の構成は住民基本台帳をベースに人数を把握しますから、職権により住民登録が抹消されているのなら、人数にカウントされません。今回の新型コロナウィルスによる生活支援についても、職権削除された人の給付金は、宙に浮いてしまうことになる可能性があるのではないでしょうか。
住民登録を復活させる方法は?
まずは、居所を定めないといけません。そして、その家に住む権限を証明する書類を用意しましょう。例えば賃貸なら賃貸借契約書、持ち家を買ったなら、売買契約書や権利書(登記識別情報)、公共料金の支払い明細などです。また、運転免許証等の本人確認も必要ですが、その住所が居所と違っていれば、繋がりによる証明も必要でしょう。いずれにしても、住民登録をする自治体と協議することになります。もちろん証明書類は、いずれも原本の真正性を確認されます。
まとめ
住民登録をしない、もしくは抹消されたとしても、収入があれば課税されます。それを故意に逃れることは、脱税行為になります。
適正に住民登録を行って、適正な納税をしましょう。