離婚の注意点|財産分与に養育費、慰謝料や年金分割をより確実なものにするために
離婚の協議内容は書面にするべき
離婚により、夫婦が一つにしていた生計を分けるのですから、財産分与のことはもちろん、子どもさんがいらっしゃれば、親権の問題を最優先に考えなければなりません。
先日、離婚を望まれている方からの依頼で、相手方から渡された離婚協議書にハンコを押していいものか、見て欲しいという相談がありました。
今はネット社会ですから、探せばワードの形式で離婚協議書のサンプルは山ほど公開されている(嫌な言い方をすれば、「落ちている」)ので、さほど知識がなくても、それなりには作れます。
私が拝見した協議書も素人さんが作られたことがすぐに分かるもので、それなりの体裁にはなってはいましたが、端々に残念な痕跡があるのです。
例えば、サンプルに「ここは事例に合わせて変更する」というような注意書きがあったのでしょう、完成品にもそのまま残っていました。
一般の方には、条文に記載するうえで何が必要な文言なのか、分からないのだと思います。
また、明らかに今回の事案にはそぐわない表現があったり、こちら側(依頼者)に不利な内容だったりしたのですが、相応の見識がないと、見逃してしまいます。
養育費について
養育費を支払う期間は、一般的には20歳までが多いと思います。
そのなかで、大学に進学すれば、23歳まで延長し、大学に進学せずに就職すれば18歳までとするような取り決めも、よく行われます。
今回も、「大学に進学しない場合は、18歳の誕生月」のような文言になっていました。
本人さんはこれで異論がないようにおっしゃっていましたが、ちょっと待ってください。
今年から18歳以上に選挙権が付与されたように、高校3年生でも、早く18歳になられるお子さんもいれば、早生まれのお子さんは、高校を卒業する直前まで17歳の子もいます。
もし、大学への進学はしないことを決めていたとして、養育費の支払いを18歳の誕生月までとする給付内容になっていたのなら、4月生まれのお子さんの場合、ほぼ1年間は養育費の支払いがないまま高校に通学することになります。
そんなの、大学に進学するかもしれないから、高校卒業するまでもらっちゃえ!となるのが現実かもしれませんが、離婚協議書も契約書ですから、そこまで想定して文言に盛り込んでおかなければ契約違反として元配偶者から返還請求をされるかもしれず、将来において不利益が生じることがあります。
年金分割について
専業主婦が離婚する場合、支払った年金を婚姻期間に応じて分割する取り決めを協議書に定めておけば、年金を受給する年齢になった時に、受給額に大きな差が生まれます。
私が見た今回の協議書にも、年金分割については、適正に定めてありませんでした。
できれば公正証書にするのがべスト
そのほかにも修正すべき点が散見されましたので、結局、離婚給付契約書として作り直すことになりました。
できれば公正証書にしたかったのですが、相手方(夫)の協力が得られないので、今回の場合は断念しました。
専門家に任せるとお金がかかる、と思われる方もいらっしゃいますが、このように将来もらえるはずだったものが受け取れない事態になれば、その額は専門家への報酬額の比ではないかもしれません。
まとめ
餅は餅屋ですよ。しかも適切なアドバイスも付いてくるので、離婚の書面での取り決めは専門家にどうぞ!。