外国人と結婚・婚約する時には、どの国の法律が適用されるの? 

2016年8月23日

外国人との法律関係について

近年、日本もグローバル化の流れが特に顕著になってきましたね。
国際結婚も当たり前の時代です。
オリンピックでも外国人と日本人との間に生まれた子(ハーフ)の活躍が目覚ましいです。

どの国の法律が適用されるの?

日本国内で起きた事件や出来事であっても、相手が外国人の場合は、その国との法律の関係が大きく影響してきますので、そのまま国内の法律が適用されるとは限らないことは、あまり知られていないかもしれません。
これを国際私法上の関係と言いますが、国内で事件や出来事が発生した場合、その法律行為を行った相手が外国籍であったなら、どちらの国の法律が適用されるのかという問題が生じます。

日本国内においては、「法の適用に関する通則法」という法律が、それを定めています。

事例:外国人である男性と結婚しようとした場合

日本では、男子は18歳になれば結婚できますが、もし結婚相手の男性が外国人で、その国の法律が20歳未満の結婚を認めていないとすれば、この場合には、要件のより厳しい国の法律が適用されることになっています。
よって、日本国内であっても、この男性が20歳になるまでは結婚が認められないことになります。
これは、日本の「法の適用に関する通則法」が、その第24条において、「婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。」と定めているからです。

事例:外国人と結婚しようとして婚約したが破棄された場合

日本の民法には「婚約」に関する規定がありません。
婚約も契約であり法律行為であるので、もし婚約が破棄される場合には、民法に定める「債務不履行」や「不法行為」で責任を問うことになります。
法律としては、「婚約」という契約を履行する債務が果たされないものであり、この行為は不法であると考えます。
「法の適用に関する通則法」によれば第7条において、「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。」とあります。
さらに、第8条では、「前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。」とあります。
つまり、当事者間で選択していない限りは、日本の法律が適用されることになります。
一方、「不法行為」は第17条 に、「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。」とあります。
つまりこれも、日本の法律が適用されるということです。
いずれにしても、「日本で行われた婚約」を破棄された場合、原則は日本の法律に則り、その責任を問うことになるようですね。

事例:日本国内で子を妊娠していながら婚約破棄された場合

この場合、相手からは子の認知はもちろん、養育費も払って貰わないと困りますよね。
子の認知については、「法の適用に関する通則法」では第29条で、「嫡出でない子の親子関係の成立は、父との間の親子関係については子の出生の当時における父の本国法により、母との間の親子関係についてはその当時における母の本国法による。この場合において、子の認知による親子関係の成立については、認知の当時における子の本国法によればその子又は第三者の承諾又は同意があることが認知の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。」と定められています。
つまり、相手方の父親の本国法に「認知」に関する規定があるのか、また、その内容が大きく影響するようです。
一方、養育費については、どうでしょうか?
日本では養育費に関する国際私法の準拠法は、「扶養義務の準拠法に関する法律」に定められています。
その第2条に、「扶養義務は、扶養権利者の常居所地法によつて定める。」とありますので、日本国内における養育に関する問題は、原則として日本の法律が適用されることになります。

大変、ややこしいですね。

まとめ

外国人が相手である場合、「結婚」や「離婚」、「婚約とその破棄」などの行為は、複雑な要因が関係し合っているために、その個々の法律行為をそれぞれ照らし合わせて、どちらの国の法律が適用されるのか、それとも重複されるのか、考える必要があります。
これは国を異にする会社同士の契約などでも、法律の関係では同じ問題が起こります。

なお今回は、分かりやすく説明するために原則的な一般論としてお話ししましたので、個別の詳細については必ずご確認ください。

愛は国境を越えますが、法律のラインは思い通りには越えさせてくれないようです。

Posted by synce-office