遺言書を専門家に依頼する意味とは|サポートをお願いする士業者によって差が出るの?どんな良し悪しがあるの?見極めのポイントは?

2019年8月14日

専門家が作成した遺言書で、その不適切さを見極める7つのポイント

遺言書には作成した後で、セカンドオピニオンに見直しをしてもらうのもアリだと思います。

参 考 記 事

あくまで個人的な見解ですので、ご了承くださいね。

遺言書をどうやって作ったらよいか分からないとか、より安心な遺言書を作るためには、専門家によるサポートが欠かせません。

しかし残念ながら、実際に私が経験したことで、起案者であるその専門家と関与した人物が儲かるような内容の遺言書を拝見したことがあります。

しかも、ずさんな内容で、遺言者と関係者(相続人・遺贈者)にとっては不利益となるものでした。

これを見て私は、専門家が関与したことで問題が生じる危険性が現実として存在することを初めて知り、これは無視できないと思いました。遺言書が作られたことで、かえって不都合、不利益となる事例が、実際にあったのです。

そうならないために、遺言者が専門家に遺言書作成(サポート)を依頼する時の、注意すべきポイントを指摘してみます。

① 財産などの現状を詳しく調べずに作られた遺言書

不動産はもちろん、預貯金や現金についても、遺言者(依頼者)からのヒアリングによる情報のみを遺言書に記載したなら、その結果、適正を欠いた遺言書になる可能性があります。

記憶による情報だけでは、実際の財産と大きく異なる場合があるからです。

不動産にしろ、その価格は固定資産税で計算した場合と、相続税評価額で計算した場合では、大きく違ってきます。持分も考慮しなければ、正確な価額は出てきません。

もし不十分な財産調査により不正確な財産目録が作成されたなら、特定の相続人の遺留分を侵害する可能性もあります。

そうなれば、遺言書を作ったことで、かえってトラブルになる危険性すらあります。

また依頼した専門家から、いきなり不動産なら住所(地番)、預貯金なら金融機関名と口座番号を聞かれて数日後、「案が出来ましたので、公証役場で公正証書を作る日を決めましょう」なんて言われたら、やめたほうがいいですよ。

この専門家は、文章の起案まで公証人に丸投げしてるだけの、単なる仲介人ですから。

自分で案まで作り、文章(条文)として内容を練って初めて、文言の言いまわしによる懸案事項や課題、疑問が見えてきます。

打ち合わせ(相談)を重ねて方向性を決定し、課題の一つ一つを検討し問題をクリアしてはじめて、専門家としての能力が試されます。

その努力をせずに丸投げをする専門家が、実際にいます。

それを見極めるポイントとしては、一番最初に提示される遺言書(案)の1枚目もしくは最終ページに、早くも公証人が名前を記載していれば、丸投げ確定です。

その専門家と仮に打ち合わせを重ねたとしても、その情報を公証人に伝えることしか、してくれません。

② やたらと登場人物が多い遺言書

遺言書は、特定の人物に財産を譲るために書き記すものです。しかし、その特定の人物が、遺言者よりも先に亡くなられることもあります。

その場合、代わりに別の誰かを指定することができます。

例えば、長男に相続させたいけど、もし長男が遺言者である親より先に死亡した場合は、長男の妻に遺贈する、という感じです。

これを「予備的遺言」と言います。

遺言書作成をサポートしている専門家が起案した遺言書にて、この予備的遺言で指定する「もしもの時の人物」が、むやみやたらに多いと、怪しいですよ。

公正証書遺言は、予備的遺言をすること事態で、公証人への費用(手数料)が増すことはありませんが、本来の相続(もしくは遺贈)する人物と比べた場合、多い方が費用の算定の際の基準になります。

万が一の備えなのに、その登場人物が多いのは不自然です。

不必要に登場人物を増やすことは、遺言者(依頼者)の利益を損なう恐れがあります。

③ 遺言執行者=遺言書の起案者である遺言書

遺言書を自分で起案しない場合には、作成をサポートする専門家が起案するものです。

この起案者と遺言執行者(遺言の内容を実現するための手続きをする役割に指名された人)が同一の場合は多くみられますし、特別なことではありませんが、場合によっては要注意だと思います。

だって、悪く言えば起案者は、自分の好き勝手に都合よく遺言書を作成できる立場にあると言えるからです。

これを避けるため万が一に備え、遺言者側がすべきことは、第三者を遺言執行者にする必然性があるかどうか、これを確認することです。

十分な説明もなく起案者である専門家が、「私が遺言執行者になっておきます」なんて言うこと自体、説明責任を果たしていません。

本来は、相続する、もしくは遺贈される人物を遺言執行者にも指定しておけば、自分で権利を行使すればよいだけのはずです。

場合により、相続もしくは遺贈される人物が複数人いたり、手続きが複雑なときは、専門家である第三者が遺言執行者に指定されていれば、確かに関係者にとって有難いですし有益になるはずです。

しかし、そうではなく、当たり前のように起案者=遺言執行者になろうとしたのなら、その遺言書の適正さを疑いの目で見る意味はあるかもしれません。

例えば、単純な相続登記や預貯金のみ遺言する場合とかなら、わざわざ専門家に遺言執行をしてもらわなくても結構なはずです。

もしくは、「遺言執行者はその職務を委任することができる」と書いておけば良いだけのことです。

もし必然性もないのに起案者=遺言執行者に指定されていれば、遺言者もしくは関係者ファーストではなく、起案者の利益を最優先にしている可能性があります。

なにしろ、起案者は遺言書の案を作ることができますから、起案者=遺言執行者である自分の利益を最優先にして好き勝手に書いている可能性を否定できません。

遺言者は法律に詳しくないので専門家に頼むのですが、その専門家に「これが法律ですよ」と言われたら、そうなのかなと疑う余地もないでしょう。

ここに、問題があったとしても発覚しないカラクリがあります。

その起案者=遺言執行人の報酬は、遺言書で定めることができます。

④ 高い%(パーセンテージ)で遺言執行者の報酬額を定めている遺言書

遺言執行者の報酬を、対象財産の○○%(つまりパーセンテージ)にしている遺言書は、たくさんあります。

例えば遺言執行者の報酬を5%とする遺言書があれば、財産が1億円なら報酬は500万円です。

金額の妥当性は別問題として、これ自体を悪と言っているのではありません。

しかし私は、遺言執行者の報酬を”%(パーセンテージ)に設定する”ことに、妥当性があるようには思えないのです。

なぜなら、相続財産の大きい小さいに関わらず、”手続きの手間はほとんど同じ”だからです。

本来でいえば、その仕事量に応じて報酬は得るべきものです。

不動産の登記をするにしても、不動産価値の違いで登録免許税は大きく違いますが、登記の作業量や手間が変わるものではありません。

預貯金の解約手続きにしても然りです。手間は口座の残金に左右されるのではなく、口座の数によるものであるはずです。

それを一律に口座残高の%(パーセンテージ)で、しかも高い率で利益を得ようというのは、遺言執行者の職務の趣旨にそぐわないように感じます。

もちろん、報酬の設定は自由ですし、不法・不当でもなく非難されるものではありません。他の士業者から、「営業妨害だ!」と誹りを受けるかもしれません。

しかしながら、明確にパーセンテージにすることの合理性が説明されないのであれば、不適切さを否定できないのではないでしょうか。

私の個人的な意見ではありますが、 遺言書作成の費用に関する、一つの判断基準としても良いように思います。

⑤ 一読しても意味がよく分からない遺言書

専門家が関与しているにも関わらず、関係者にとってよく分からないような内容の遺言書は、作る意味合いとしても充分ではないと思います。

日本語の文章力に乏しいのか、わざと曖昧にしているのか分かりません。

わざわざ高い報酬を払って専門家にお願いしたのに、その結果、どうなるかよく分からない遺言書なんて、トラブルが起きる元ですし。

難読であったり、日本語として間違っている、主語と述語の関係性が曖昧など、きちんと整理できていない遺言書は問題だと思います。

特に、読み方によって利益を受ける人物が異なるような遺言書は、作り直した方が無難です。

曖昧な遺言書があるばかりに、相続が発生したときに、かえってトラブルを招くこともあるからです。

⑥ 遺言書が有する効力以上の権限を、遺言執行者に持たせたような遺言書

遺言書には、民法その他の法令により、記載することで効力を有する事項が定められています。

つまり、効力を有さないことを遺言書に書いても意味がないのです。

しかし、あたかも効力があるように見せかけ、その権限を遺言執行者に与えたような遺言書の文言は、 遺言者を惑わし誤認させるばかりか、相続の際に混乱をもたらす元です。

例えば、税金の納税負担者まで指定した上で執行する権限を遺言執行者に与えるような内容などです。

納税の義務者は税法上の問題であるところ、遺言執行者の職務として指定することで、混同が生じてしまいます。

このような遺言書は、作るべきではありません。

⑦ 正本も謄本も渡してもらえない遺言書

コピーのみ渡されている場合も同様です。

極端に言えば、遺言書は作成した本人(遺言者)が持っていればよく、相続人や関係者には、「〇〇公証役場で公正証書遺言を作った」とだけ言っておけば良いのです。

それにも関わらず、遺言書を作った(サポートした)専門家のみが、その正本や謄本を保管しているのであれば、 その必然性を疑ってみましょう。

遺言書を執行する際に報酬及び金銭を得るため、与えられた権限を行使する準備をしていると考えられませんか?

不自然に情報を隠されている、管理されているような感覚があれば、要注意ですよ。

遺言書の起案者(サポートする専門家)の意図や都合により、 遺言書の内容が左右されているので証拠は見せたくない可能性があるかもしれませんよ。

遺言書に限らず、仕事の仕方が不誠実だと気になれば要注意!

  • あまり会おうとしない
  • 都合を押し付けてくる
  • 初動が遅い(悪い)
  • 面倒臭いという空気を出してくる
  • 高圧的で、意見を言いにくい雰囲気を作られる
  • 書面を作らず渡さず、要件は口頭で伝えるのみ
  • やりとりの全てをLINEでしようとする
  • 日本語(文章)がおかしい、表現が不適切・不適当
  • 「任しとけ」と安易に言って、あまり説明しない
  • ゆっくりじっくり話を聞こうとしない
  • 現状(詳細)を調べようとせずに、結論ありきで話をされる
  • 言葉の上げ足を取る(精神的に詰めてくる)
  • 大切な書類なのに預り証を発行しない
  • 見積書の内訳の説明もせずに請求書を一方的に送りつけ、報酬を振込みをさせる
  • お金の流れを明確にしてくれない

遺言書は、財産を築いた人の意思を確実に実行するためには、必要な制度です。

その制度を適切に効果的に運用するため、あくまでサポートする立場で、私たち専門家が存在します。

その信頼性が揺らぐことがそもそも問題なのですが、依頼者側においても、”信頼できる”専門家を選ぶ目を持っていただく、もしくは、不適切な遺言書が作られてしまうリスクを認識し、自分の身は自分で守ることが大切だと思います。

まとめ

遺言書は撤回し、何度でも書き直すことが出来ます。

既に遺言書を作成されている人も、今一度、あらためて見直してみられてはいかがでしょうか。

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