京都アニメーション事件でガソリンスタンドの販売方法に問題はないの?
平成以降で最悪の放火殺人事件に
令和元年7月18日に発生した、京都アニメーションの放火事件で被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。
まだ事件に関する詳細が分かっていませんが、多くの方の命が無残に奪われたことに、強い憤りを感じます。
お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、怪我をされた方の一日も早いご回復をお祈り申し上げます。
ガソリンスタンドで40リットルのガソリンを購入か
警察と消防が、まだ事件との関連を調べている段階なので断定はできませんが、犯人は現場近くのガソリンスタンド(GS)に行き、携行缶2つで約40リットルのガソリンを購入したとみられます。
これがフルサービス式のGSなら、従業員が給油しますので、法令で定められた適切な携行缶への給油は、適正な量なら問題がないと考えられます。
しかし、このGSは「セルフ式」だったようです。
セルフ式は客が自ら給油する仕組みなので、消防に関する法令により、様々な制限があります。
セルフ式のGSでは、自走しない自動車や、牽引されてきたボート、発電機などには、原則として給油することができません。
携行缶への容器への詰め替えについては、1日の指定数量未満であれば従業員が行う場合に限り認められています。
ただし、各都道府県や所轄消防署が定めた基準により、セルフ式のGSでは携行缶への給油は行わないよう指導している地域もあります。
つまり、セルフ式のGSでも従業員が給油するのなら携行缶に給油することは可能です。
しかし、セルフ式は人員も少なく適切な管理が出来ない場合がある等の理由から、従業員による給油であっても、携行缶による持ち帰りはやめてくださいと、地域によっては行政からGSに指導されているのです。
これにより、携行缶に給油しての販売は、セルフ式のGSの判断で、販売する・しないがあるようです。
京都市ではセルフ式GSで携行缶への給油をしないよう指導している
今回の事件は京都市伏見区で発生しました。
管轄する京都市では、「給油取扱所の基準」として定め、セルフ式の給油所での携行缶への給油はしないよう、指導することとしていました。
販売されたGSが京都市内ではないかもしれませんし、これはあくまで指導でもあります。
今回の場合、どのような問題として取り上げられるかは、注視していく必要があると思います。
今回のGSの対応に問題は?
以上の点を前提に、この事件でガソリンを販売された可能性のあるGS(セルフ式)での当日の対応について、考えてみます。
事件が発生する約30分前に、男が台車に携行缶を2個載せてGSに現れたそうです。
従業員が、何に使われますかと確認したところ、「発電機に使う」と答えたので販売したとのことです。
おそらくこのGSでは携行缶によるガソリン販売を容認していたのだと思いますが、従業員が客に代わって給油したという報道は、まだされていません。
もし、使用の用途だけを確認して、男に給油させたのなら、これも問題となるはずです。
ガソリンの持ち帰りについて
ガソリンを持ち帰る際に認められる携行缶は、ガソリン専用で金属製の基準を満たしたものとなります。
灯油を入れるポリタンク等にガソリンを給油することはできません。
今回の報道では、明確に「携行缶」と言っていますし、実際に20リットル程度の容量の携行缶もネット等で購入できます。
そして、自動車で運搬する際という条件付きではありますが、22リットル以下の携行缶でなければ、給油できません。
今回はこのサイズの携行缶を2つ用意したというところも、犯行準備が周到で、綿密に考えられているように思います。
つまり、20リットルの携行缶を使用することで、通常の使用であると偽装することができるのです。
カー用品店等で売られている携行缶は、せいぜい3~5リットル程度の小さなものが多いです。
手に入りやすいからと、これを多く用意すると怪しまれる恐れがありますから、わざわざ制限量いっぱいまで給油できる20リットルのサイズを用意しています。
随分と用意周到なところも、計画性が高いことの裏付けと言えるのではないでしょうか。
ガソリンへの安全対策は?
ガソリンを使用した犯罪は、過去にも大きな被害をもたらしています。そのために消防に関する法令は幾度も改正され、安全対策が施されてきました。
これはGSに限らず自動車についても、例えば自動車の給油口からガソリンの抜き取りを防止するために、ポンプなどが挿入できない複雑な作りになっています。
しかし、今回のように、犯行を行う目的で、ある程度の法的な知識を持って計画された場合、必ずしも万全とは言えないではなかったのかもしれません。
今後は、ガソリンの持ち帰りにつき、セルフ式での販売を禁止するとか、制限量を少なくする等の対策がなされるかもしれません。
まとめ
ガソリンは、極めて揮発性も燃焼性も高い「危険物」です。
日本は車社会ですから、ガソリンの存在は欠かせません。
今後は、電気自動車の普及などにより、ガソリンが身近な存在ではなくなることが、より安全な社会の実現に繋がるのかもしれません。