養子縁組をすれば苗字(名字)はどうなるの?どんな場合に姓が変わるの?
日本の戸籍制度は複雑でややこしい
例えば、家の後継ぎのことや、相続税対策などのため、普通養子縁組が行われることがあります。その目的のため、 養子縁組は親族の間でされることが多いのですが、ここに落とし穴といいますか、見落としてしまいがちな原因が潜んでいるのです。親族であれば「名字(姓)」が同じだからです。
では、今回は普通養子縁組の注意点について、具体的に考察していきましょう。
養子縁組をする状況によって、戸籍が変動する
養子縁組には、様々なパターンがあります。今回は、養子が15歳以上であることを前提に、よくあるケースを想定します。
- 甥(姪)が、伯父(伯母)と養子縁組をするケース
- 婚姻により旧姓をあらためた配偶者が単独で、養子縁組するケース
- 婚姻している夫婦がともに、養親夫婦と養子縁組をするケース
1.甥(姪)が、伯父(伯母)と養子縁組をするケース
上記の1のケースでは、養子である甥(姪)が結婚しているか否かで違います。
養子が未婚の場合は、養親の戸籍に入ります。
養子が婚姻していれば、養子を筆頭者として新しい戸籍が編製され、配偶者とともに新戸籍に入ります。
わざわざ新戸籍が編製される理由は、日本の戸籍法では、1つの戸籍に複数の夫婦が存在することを認めていないからです。
つまり、1つの戸籍には、夫婦と未婚の子の構成しかあり得ないのです。しかも、ややこしいのは養子縁組をした子の子供は、従来の戸籍に留まります。これを親と一緒に戸籍(新戸籍)に入れるには、わざわざ入籍届を出さなければいけません。
親戚で名字が同じなら、なお間違えを生じさせやすい
養子縁組をする場合、甥や姪などの親族関係であることが多いです。この場合、名字(姓)が同じなのが分かりにくいと言いますか、混同を招く結果になっていると思います。養子縁組をする場合、原則として養親の名字(姓)に改名することになります。例え親戚で同じ名字であっても、養親の名字にあらためることになるので、新戸籍の編纂ということになるのです。つまり、新戸籍を編纂したことにより、従来の名字とは別モノの養親の名字に姓をあらためたことになるのです。見た目の名字は変わらないので、ややこしいですね。
孫を新戸籍に入籍させても、養子縁組をしたことにはならない
整理しますと、新戸籍を編製しても、養子縁組をしているのは、対象となる子一人です。追従して戸籍に入籍した配偶者はもちろん、すでに夫婦には子がいて、この子を入籍届で新戸籍に入れたとしても、養親との養子縁組は成立しません。
ここが紛らわしいところです。養子縁組により編成された戸籍に入籍しても、養子縁組をした人物以外の家族には、養親との縁組の関係性が及ばず、相続関係(直系尊属・卑属による関係)は生じないのです。この関係性を生じさせるには、別途それぞれが養子縁組をする必要があります。
養子縁組後に養子から生まれた子(孫)は、養親と相続関係が生まれる(直系尊属・卑属の関係となる)
養子縁組をする養子について、その子(養親からすれば孫)が養親との相続関係にあるかについては、養親から見て孫が縁組前に生まれたかどうかで決定します。つまり、生まれる前に親が縁組をした子は、養親からの直系による関係性が生じますが、生まれた後に養親が養子縁組をした場合には、その養子の子は養親との間に直系による関係性は生じないことになるのです。
ややこしいですね。
なお、養親と、養子の子との間で養子縁組をすれば、相続関係(直系尊属・卑属)が生じることになります。
2.婚姻により旧姓をあらためた配偶者が単独で、養子縁組するケース
これは、養子縁組をすれば養子は、養親の名字(姓)に変更するルールの例外にあたります。婚姻により配偶者の姓にあらためた者が養子として養子縁組をする場合、新たに戸籍を編製することも、養親の姓に変えることもなく、従来の姓(婚姻時にあらためた姓)のまま現在の戸籍に存続します。その戸籍の身分事項に養子の事実が記載されるのみです。
これをもし夫婦ともに養子縁組したなら、上記1の通り、新戸籍が編製されることになります。
3.婚姻している夫婦がともに、養親夫婦と養子縁組をするケース
基本的には、上記1のケースと大きくは違いません。養親夫婦のどちらかのうち、また、養子夫婦のどちらかのうち、それぞれ誰か一人が生存していれば、そこには養子関係が生じます。
戸籍の見誤りにご用心
このように、養子の相続関係は複雑になりがちです。しかも、養子縁組の成立前に子が産まれていたかどうかで、法的に相続関係(代襲)が生じる孫となるのか、赤の他人の扱いとなるのかが違ってきます。
もし、養子縁組のため新たに編製された戸籍に、その配偶者や子を入籍させていたら、どうでしょうか。養子縁組をしたタイミングで新戸籍が編製(作成)されるという紛らわしさもあると思います。戸籍をパッと見た感じでは、養子縁組の時に作成された新戸籍に、家族の全員が入っていたなら、その家族はみんな、養親との相続関係にあると錯覚して見えたりしませんか?しかも「○○日に入籍」などの文字が記載されますから、入籍=養子縁組の成立として、戸籍を見間違える危険性があるのです。
相続が発生した時に、相続人であるか否かによって、相続税の基礎控除額が違ってきますし、相続(遺贈)時の不動産の登録免許税などの税金の負担も大きく変わります。そもそも相続人でなければ、遺言書を書かない限り、遺贈を受けることもできません。養子縁組をされた方、もしくは検討されている方は、縁組によってどのような効果を生じさせ、その結果まで間違いのないよう、理解し把握されておく必要があると思います。
養子縁組の方法
普通養子縁組をするには、市区町村役場にて「入籍届」を提出します。未成年の場合は親権者の同意が必要になりますが、15歳以上であれば自分の意思で縁組ができます。
特別養子縁組の場合は、家庭裁判所に申し立てます。
まとめ
養子縁組の制度は複雑です。思い込みで手続きしたり、戸籍を見て勝手な解釈をすると、大事な場面、例えば相続の発生時に取り返しがつかない事態となっている可能性があります。
知識のない安易な思い込みは危険です。戸籍は慎重に見てくださいね。