未登記建物の所有権|権利関係に変更があれば届出を!
建物(家屋)が登記されていなければ、役場での登録事項は自動的に変わらない!?
登記されている建物(家屋)の場合なら、例えば相続などで所有者が変更になれば、所有権移転の登記申請をしますよね。これにより法務局からは市町村役場へ変更事項が通知されます。つまり、登記さえ適切に行っていれば、固定資産の情報につき、わざわざ市役所に名義変更(所有権移転)などの変更事項を届け出る必要がないのです。自動的に、固定資産課税台帳において変更されます。
しかし、未登記(登記されていない)建物の場合は、違います。建物について公的に登録(記録)されているのが実質、市役所(固定資産課税台帳)だけとなりますから、記載事項に変更が生じれば、所有者が役場に申し出て、所有者側で変更の手続きをしなければなりません。つまり、相続などで未登記建物の所有者が変更になれば、わざわざ市役所に「未登記建物所有者変更届」を提出しなければいけません。
これに気付かず、または知らずに、もしくは忘れて届出をしないでいると、市町村の固定資産課税台帳において、いつまで経っても以前の所有者(納税義務者)の名前のままという事態が起こり得ます。
これを放置していても役場は、相続関係者に対して納税義務者を変更すれば良いだけで、さほど困りません。税金を誰かが納めてくれていれば、それでいいのですから。
一方、困るのは真正の所有者です。税金を納めるだけで、役場の台帳上の所有者は以前のままですから、所有者としての公示力がどこにもない状態となります。そもそも登記されていないので、担保(抵当権)を付けることもできませんから、名義人が誰かなんて、意味が無いようにみえるかもしれません。しかし、登記されていない以上、公的な証明として所有の実態を明示(表示としては「納税義務者」)できる唯一の方法は、この固定資産課税台帳に頼るしかなく、ここの所有者の登録が正しくないのであれば、真の所有者として権利を主張することが難しくなる可能性があるのです。
具体的には、建物を建て替える時などに問題となります。まず解体する時に、名義人と異なる人物が、その権利を行使できるのかということ。そのほか、土地を分筆や合筆して未登記建物の所在地(地番)が異なった状況が生じたときに、古い所在地のままの表示では、所有権を主張する根拠が乏しくなることなどでしょうか。
固定資産課税明細書や固定資産評価証明書に記載されている所在地(地番)と現況が違う建物では、所有権を主張できる根拠がないと言われても仕方ないかもしれないのです。しかも変更事項の発生から数年、数十年経ってから、未登記建物の所有者は自分であると証明することは、相当難しくなるのではないでしょうか。
また、極端な例かもしれませんが、もし未登記建物に別の第三者が住み着いたときに、立退き(明け渡し)を求めるとしても、所有者としての証明力(公示力)がありません。新築した際の契約書などを提示しても、所有者が現在も同一である証明が出来ません。つまり、未登記の場合は、所有者としての適切な権利行使が出来ないことが有り得るのです。
登記しなければ、権利は曖昧になります
建物は、登記しましょう。真の所有者として権利を主張し、行使するために必要です。建物を売買をしたり抵当権を設定するには、登記は必須事項です。
また、登記されていなければ、相続が発生したときには、手続きが漏れがちです。後に数次相続が発生したなら、相続人が増えていて遺産分割協議が成立せず(合意できず)、所有権が移転できない場合も起こり得ます。
なお、固定資産税の納税をしていたとしても、その事実だけで所有権(もしくは賃借権)を有しているのかを争った事件では、納税義務者(もしくは納税管理人)の権利を否認した裁判例もあります。つまり、固定資産税を払っていて固定資産課税台帳に納税義務者の記載があったとしても、所有者としての権利が担保できない恐れが、未登記建物にはあるのです。
建物を未登記のままとするのなら、市町村役場への届出の漏れに注意しましょう
それでも建物を未登記としておくのなら、せめて公的な書類(固定資産課税台帳)においては、真正な記載を保ちたいものです。記載事項について変更があった時には、届出(申し出)は必ずしておきましょう。
そもそも家屋(小屋なども)を建てたなら、市区町村役場の固定資産税課の職員が、必ず見にきます。建築確認の申請があれば分かることですし、役所としては、市町村税である固定資産税を課すための評価が必要なのです。つまり、登記をする・しないに関わらず、建物が建築(新築)されれば必ず固定資産課税台帳に記載(登録)されることになります。あとは、増築などをすれば、やはり役所は課税のために職権で記載事項を変更します。しかし、課税に関係のない部分、例えば、所在地の表示が変わったなどの場合には、課税に影響しない(市役所の業務に支障が生じない)ので、所有者側が届出をしない限り、放置されるのです。というよりも、所有者からの届出がなければ、役場が変更事項に気付く手段がないのです。
未登記建物の変更を届出るときの例
- 相続が発生した時
- 建物(家屋)を譲り受けた時
- 所在地の表示に変更が生じた時(土地の分筆や合筆など)
以上の出来事などがあったときは、すぐに役場に申し出ましょう!
特に、田舎の相続では、未登記建物の所有者の名義変更が行われていない、見過ごされていることが多くあります。ご注意くださいね。
まとめ
でもやっぱり、建物は未登記とせずに、適切に登記しましょう!