行方不明者・失踪者のいる相続|どうすれば手続きを進められるの?排除はできるの?

2020年2月4日

行方不明者がいるからと相続を諦めるのは、まだ早い!

確かに、兄弟や姉妹の相続人のうち、一人でも行方不明がいれば、遺産分割協議ができません。つまり相続手続きはできません。

特に遺産に不動産(土地・家屋)があれば、相続による所有権移転の申請には、その証明として「遺産分割協議書」が必要になるからです。

参 考 記 事

行方不明者の捜索には、「戸籍の附票」を取得しましょう

戸籍の附票とは、住民票と戸籍を繋ぐものです。

参 考 記 事

相続人であれば、相続人調査をする際に、行方不明者の戸籍を取得できます。被相続人(亡くなった人)の過去の戸籍(原戸籍)を見れば、行方不明者の転籍先が分かり、現在戸籍に辿り着くことができます。その際に、戸籍と同時に戸籍の附票を取得するのです。そうすれば、戸籍の附票には行方不明者の住所が記載されています。これで行方不明者の住所が分かるのです。住所が分からない=行方不明だと思いこんでいるケースは、案外あるものです。一度、戸籍の附票で調べてみましょう。

しかしこれは、住民登録をされている住所が分かるのであって、本当の現在の居所ではないかもしれません。住民票を移動せずに引っ越していれば、公的証明書に現在住所は記載はされていません。

行方不明者にお手紙を出しましょう

しかし、住民登録上の住所が分かれば、郵便を出すことができます。そこにお手紙を出して、遺産分割協議に協力をして欲しい旨と連絡先を書いておきましょう。うまくいけば、行方不明者から連絡が来るかもしれません。なぜなら、その場所に住んでいなくても、郵便局に転送届を出していれば、郵便物は転居先に届く可能性があるからです。

お手紙は「本人限定受取」ではなく、「配達記録」が残る郵便を!

本人限定受け取りの郵便は、確かに本人が目にする可能性は高まりますが、その居所に不在であれば転送されません。一方、配達記録は転送される上、その記録も残ります。この記録は後々、行方不明者を探したという事実として、証明の上で必要となってきます。

最終手段は代理人(弁護士)による「遺産分割調停・訴訟」

住民登録の住所にもおらず、お手紙も届かずとなれば、もう自力で遺産分割協議をする方法は見当たりません。そうなれば、弁護士の先生にお願いをして、行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをして、遺産分割協議を成立させる方法しかありません。

探偵にお願いして住所を調べる有効性は?

確かに現在の住所は分かるかもしれません。分からないかもしれません。それでも探偵への報酬は発生します。しかも、相手方が要求に応じるかどうか分からず、その交渉もすべて自分でしなければなりません。一方、弁護士は代理人として動いてくれます。おそらく対価としては、探偵に支払う対価と、弁護士に依頼をして最終的にかかる金額と、さほど変わらない可能性があるのではないでしょうか?

私の肌感覚ではありますが相続の場合、行方不明者に自力で辿り着けない場合は、弁護士に依頼をする方が、費用対効果と確実性の面で有利と思います。

行方不明者に代わる「不在者財産管理人」の選任が必要

行方不明者の存在を無視して遺産分割しても無効であることは、裁判でも同様です。ここでは弁護士の先生の力をお借りすることになります。

自力で行方不明者を探したが見つからなかったなら、その事実をもって、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることが必要となります。つまり、行方不明者に代理人を立てた上で、相続人による遺産分割協議をしましょうということです。しかし、この不在者財産管理人には、次の項目について条件が課せられています。

  • 管理行為(保存行為、利用行為、改良行為)しかできない
  • 不在者(行方不明者)の相続持分相当の権利分は絶対確保
  • 法定相続人は不在者財産管理人になれない
  • 調停申立て時に予納金が必要

「管理行為」しか出来ないとは、例えば不動産があった場合、その持分の所有者にはなれるが、売却の同意などは出来ず、その場合は「権限外行為」の許可を家裁から得なければなりません。

「不在者の権利分は絶対確保」とは、遺産について不在者の法定相続分が4分の1だったなら、その相当価額を下回るような遺産分割協議には応じられないのです。遺産分割協議を成立させるには、家裁の許可が必要という前提があります。

「法定相続人は不在者財産管理人になれない」とは、遺産分割協議にあたり、利益相反になるからです。また、地域により、不在者財産管理人には原則として、弁護士か司法書士しかなれない地域もあるようです。京都や大阪もその傾向にあるようです。

「予納金が必要」とは、不在者財産管理人に支払われる報酬を、調停の前に予め確保して用意してくださいね、ということです。これは原則として申立人が用意します。金額は家庭裁判所が決めるもので、数十万円が相場と言われています。

「失踪宣告」という方法もある!?

行方不明者(不在者)のいる相続の場合、失踪者として申し立てをして認められれば、その行方不明者を除いて遺産分割協議ができます。しかし、以下の問題が生じます。

  • 行方不明(最後に確認された消息)から7年間経っていることが要件
  • 生存が判明すれば、失踪宣告は取り消され、原則として財産関係や身分関係が復活する

しかも、失踪宣告が認められるのは、申し立てから約1年ほどかかります。

行方不明者を死亡していると推定して法律効果をもたらす制度ですから、相続人としては遺産分割をすることを目的にこの申立てを選択するのは、少しリスクが高いですね。

単に手続きをするのが目的なら、不在者財産管理人の選任が適しているように思います。

行方不明者を遺産分割から排除(廃除)できるの?

行方不明者が法定相続人であれば、その人物を除いて成立したとしても、その遺産分割協議は、無効になります。

遺産に不動産があれば、早期の決着を!

今は行方不明者が1人でも、時間が経てば相続人が死亡するなどして代襲相続が発生すれば、相続人の数は芋づる式に増えます。そうなれば、訴える相手方も増えて、お金と時間はかかる一方です。相続手続きは1日でも早くしておきましょう。

まとめ

行方不明者のいる相続で、自力解決のための道はあります。そしてその努力は自力解決が不可能となったとしても、不在者財産管理人の選任のため、無駄にはなりません。最終的に代理人を立てての遺産分割調停に必要な工程となります。確かに調停や裁判となれば、お金も時間もかかります。その代わり、確実な決着に向けて動くことは間違いありません。

行方不明者がいても、裁判所に訴えれば解決するという最終手段は残されています。困難な相続でも、諦めずに臨めば、その解決の糸口は見えてきます。問題を子どもに回さないようにするのは、今の時代を生きる世代の務めだと思います。

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