吉本興業の所属タレントは契約書の作成を求めるべき!契約解除のリスクに立ち向かえないから
優越的地位の濫用は排除されるべき
反社会的勢力との交流を持ち金銭を得ていたとして吉本興業に所属していたタレントの宮迫博之さんと田村亮さんが昨日に謝罪会見をされました。そのことで本日はワイドショー番組で、松本人志さんと東野幸治さんがコメントされていました。
明日は吉本興業の社長が会見をされるということですので、一連の事案について契約に関する双方の当事者からの発言が出そろっていませんが、印象としては優越的地位の濫用による圧力が背景にあったことで、事態を悪化させているように思いました。
弁護士を立てたことで謝罪会見を行わせないとか、要望を受け入れなければ関係者全員をクビにするとか、社会的地位のある企業のトップの発言とは思えません。それにつき、反論するための材料がないのは、やはり契約の証拠となるマネジメント契約書が存在しないからではないでしょうか。
吉本興業の契約形態から、クビは有り得ない
所属タレントと事務所との契約には、大きく2つの形態があります。
- 雇用契約書
- マネジメント契約書
月給として固定給発生しているのなら「雇用契約」が、完全な歩合制であるのなら、「マネジメント契約」が生じていると考えられます。
雇用契約であれば、会社の人員(社員)としての給与になりますから、タレント側は確定申告も必要ありません。
一方、歩合制で出演料等をパーセンテージで受け取っているのなら、それは個人事業主として収入を得ていることになり、タレントが自分で売上(収入)を管理し確定申告もするケースがほとんどだと思います。
タレントは契約書の存在が命綱
問題なのは、報酬を出している立場が、対価として受け取る者に対して、「クビにする」という発想です。実態としては、「契約解除」が正しいのですが、当事者同士の認識としては「クビ」とされる状況に違和感がないのでしょう。
一般社会とは違う商慣習があるのだとは思いますが、感覚がかけ離れています。
本来であれば、契約書を確認すれば、その対応が契約違反で横暴であるのなら指摘し、「クビにはできませんよ。契約解除するのも、契約書の条項に該当しませんよ」とか反論ができるのです。
今回の場合、契約書がないばかりに、立場の強いものからの一方的な申し出に従うしかなく、仕方なしに弁護士を立てたことで反感を買い、事態は悪化していったようです。
弁護士は代理人であり、代弁者の役割を担ってくれます。
弱い立場の者が反論できる術を持てないのなら、弁護士にお願いするのは正しい判断で、それを面白くないからと拒絶し、態度を硬化するのは、それこそ現代の社会性に反する対応のような気がします。
芸能界でも契約内容を書面で明確にすることをスタンダードに
吉本興業に限らず、少数ではあれ、所属タレントとの契約書を作成しないという事務所は存在するようです。
これによりリスクを負うのは圧倒的にタレント側にあると思います。報酬を受け取る側であり、活躍の場である市場において、事務所側の意向が強く働く土壌であるためです。
契約書が存在しないことで契約解除の妥当性は、そもそも争いにくいことはもちろん、例えば知的財産権に関しても、その帰属先や金銭的利益についてトラブルを招くことになります。
全く事例も業種も違いますが先日、セブンイレブンジャパンとオーナーである個人事業主が、24時間営業の是非について意見が対立し、トラブルになっていると報道されました。
この事案の場合、フランチャイズ契約を書面で交わしているにも関わらず、しかもその書面には24時間営業を義務付ける内容があって、双方が同意をしているにも関わらず、トラブルが生じています。
しかし、書面があるからこそ、その条項の部分について社会性と照らし合わせて妥当性を争えるわけで、最終手段として法廷による決着も期待できるのです。
まとめ
書面による契約書は自分の身を守るための武器
契約書もないタレントの場合、しかも個人事業主として巨大企業に立ち向かう訳ですから、掴みどころのない争いを挑むしかないのです。双方にとって利害関係のある部分は、きっちりと契約をして書面にて確認をする。そして修正があれば、また契約し直すのが大事だと思います。
対等の立場とならないまでも、書面があれば主張や反論をする材料になることは間違いありません。自分を守るためにも、事務所側との書面での契約を徹底することをお勧めします。
個人事業主には団体交渉権もありませんから、同じ立場の仲間と相談して集まって、事務所側に申し出るのも方法だと思いますよ。
場合によってはユニオンや弁護士の力を借りてでも、ぜひ交渉して実現してください。