NPOの運営は、結構たいへん! 申請など許認可手続きは行政書士にお任せ!
決算報告のこと
この時期と言えば、3月締めの法人の決算報告が集中しますよね。
とくに、事業委協同組合や社会福祉事業を行っている法人は、便宜のために、行政庁の期末と合わせた3月31日を決算日としているところが多いと思います。
また、NPOは非営利活動をする法人(なにしろ特定)ですから、特にその傾向が強いですよね。
ところで、NPOって、組織形態としては結構手間のかかる義務を課せられていますが、ご存じですか?
年度の前後の手続きで言えば、「毎年の事業年度終了後に必ず社員総会を開かなければならない」のです。
また、NPOは、年度終了の3か月以内に、所管する行政庁に前年度の報告義務があります。
まあ、これは、NPOを立ち上げた時には分かっている情報ですから、当然にご承知のことと存じます。
しかし、NPOには、そのほかにも年度終了後の手続きに関する義務があります。
それは、「登記」です。
NPO法人であれば、毎年、決算終了後の2か月以内に、法務局に「資産の総額の登記」をしなければなりません。
資産の総額とは、資産合計から負債合計を差し引いた正味財産のことです。
活動しているNPOであれば、毎年当然に資産の総額は変動しますから、つまり毎年に登記申請を行う必要があるということです。
しかも、この変更登記をしなければ(懈怠と言います)、NPO法人の理事または監事等に対して、20万円以下の過料を課すと定められています(特定非営利活動促進法第80条第1項)。
結構高額ですよね。
ここで注意すべきは、制裁を課されるのは、法人ではなく、「理事等」ということです。
つまり、役員の個人に制裁金が課されるのです。
NPOは非営利団体ですから慈善事業などを行うなど、どちらかと言えば良いイメージがあるので、役員への就任を依頼されると、協力したくなるのが心情ですよね。
しかし、役員とは運営を管理監督していく責任者でもあるので、仮にお飾りの存在で名義上だからと言って、責任を負わないことにはなりません。
適切な運営をしていくための存在として必要なのが理事であり、監事なのです。
ご自分が役員としてNPOに関与するのであれば、登記義務についても知っておきたいですね。
もう一つ、NPOの登記には、「役員変更」の登記があります。
NPO法によれば、役員の任期は理事なら最大2年、監事なら最大4年と定められています。
そして、任期途中で役員が変更した場合はもちろんですが、この任期を満了した場合であって、しかも再任(重任と言います)されて役員名簿に変更がなかったとしても、その変更登記として登記申請が必要になります。
ちなみに、同じように会社にも役員の変更について登記することが義務付けられていますが、平成18年5月1日に会社法が施行されてからは、非公開会社の取締役の任期は最長の10年まで伸長することができるようになりました。
株式会社と比較してみても、NPOは少なくとも2年に1度、役員変更登記をしないといけないのは、結構な負担に見えますよね。
しかも、この役員変更には、複雑なルールに従った要件を満たす内容による書類が必要になります。
定款によるのですが、理事を代表する規定が設けられているNPOにおいては、総会において選出された理事による理事会もしくは互選で理事を選んだという証明(議事録など)のほか、その内容によって、理事全員の就任承諾書や印鑑証明書が必要になります。
事務処理に結構な手間が掛かりますね。
しかし、税金の面で言えば、例えば会社は役員変更登記をするときに、1件につき登録免許税が1万円かかりますが、NPO法人は非課税です。
「資産の総額の登記」の場合も同様です。
NPOは「ガラス張り」のように透明性が求められるので、事務処理一つをとっても運営は大変ではありますが、税制面ではかなり有利なのが特徴です。
登記申請の登録免許税がかからないことをはじめ、法人に課せられる所得税や住民税の均等割りが、非収益事業である場合には、申請することによって免除されることもあります。
また、非収益事業のみの場合、税務署への法人税の確定申告すら不要です。
もちろん、地域(自治体や管轄の税務署)によって、収益なのか非収益なのか判断が異なる場合がありますので、その地域ごとにご確認くださいね。
なお、法務局への登記申請は、司法書士の先生の専門業務です。
行政書士にご依頼される場合は、総会の準備やアドバイス、関係書類のほか、証明に関する書類や議事録などを作成させていただきますが、登記申請は司法書士事務所にお願いをすることになりますので、ご了承ください。
所管する行政庁への年度報告は、もちろん行政書士が行う業務となります。
「NPOは手間がかかる」、「制約が多すぎる」など敬遠されがちですが、だからこそ、適正な運営が行われている組織形態であるはずと言える思います。
一般社団法人などの他の法人と比べても、社会的な信頼や評価を得やすいという面があると思います。特に社会福祉事業には向いているのではないでしょうか。
そのために公的もしくは民間の助成事業が、比較的受けやすいという側面もあるように思います。
まとめ
社会福祉事業を始められる際には、どの法人形態を取るべきかの比較において、株式会社、一般社団法人等とともに、NPO法人もぜひご検討されることをおすすめします。