土地の一部に限って賃貸借や売買することは可能なの?分筆の必要性は?法的な権限はどうなるの?

2019年3月9日

土地の所有者として注意すべきことは?

結論から言えば、土地のうち、一部の面積(範囲)に限って、その部分を賃貸借することは可能です。

また、1つの土地を分筆せずに、その土地の一部を売買することも可能とされています。

参 考 記 事

あくまで契約の対象になるということで、もちろん、その部分の位置及び面積は測量などして特定し、添付書類とする必要があるでしょう。

第三者には対抗要件が発生しない

これが問題です。契約当事者の間では有効ですが、第三者には対抗できません。

だって、その事実は登記されませんから。

日本では、不動産や債権など重要な権利や義務に関することは、「登記制度」による公示が行われています。

この公示された情報を基に、売買などの信用取引が行われて、権利変動を生じさせるのです。

公示されることの役割と意義とは?

具体的な例で考えながら、その注意点をみて行きましょう。

土地を遊休地にしておくのなら、有効活用するために事業を始める方がいらっしゃいます。

都市部であれば、簡易に始められるものとしては、時間貸し駐車場や、トランクルーム経営などでしょうか。

地方の地域であれば、ソーラーパネルによる太陽光発電の事業用地だったりします。

この場合、土地の所有者ご自身で事業されるか、賃貸借により事業者に土地を貸すのかの2通りがあります。

もし、土地を分筆せずに土地の面積(範囲)を制限(特定)して事業用地とされるなら、その相手方との契約は、十分検討されるべきだと思います。

なにしろ、その相手は、この事業については百戦錬磨のはずですから、現所有者(もしくは貸主)としては、こちらの権利を守るため、十分すぎるぐらいの情報収集と確認、石橋を叩きまくってから契約するという、強い意志と認識を持って臨む必要があると思います。

土地を貸して太陽光発電事業をする例に考えてみます。

貸し出す面積は適正ですか?

相手方との契約は、土地の一部のみを借り受けて、事業をしたいという内容になっていませんか?

しかもその場合、土地の一部だけ貸して太陽光パネルを設置する約束なのに、登記簿上ではその土地全体に、借地権が登記されていませんか?

登記簿には、賃借人による譲渡や転貸を認める記載となっていませんか?

本来、賃借人(借主)は、賃貸人(貸主)の承諾が無ければ、賃借権の譲渡も転貸(又貸し)もできません。

しかし、登記簿に賃借権の譲渡又は転貸を許容する旨の特約が登記されていれば、あらためて貸主の承諾を得ることなしに、権利を第三者に譲渡も転貸も出来てしまうのです。

太陽光パネルが設置されている場合で、大規模な災害などが発生すれば、損害が生じたときなどに問題が起きる恐れもありますよね。

A社に貸していたつもりが、いつの間にかB社に貸していることになっていた。

この場合の交渉相手は、B社になりますよ。

賃借権の譲渡・転貸を許容までする登記は、所有者として十分に考慮して判断されるべき内容だと思います。

相手方(事業者)にとって極めて有利な内容だと言わざるを得ません。

業者から、「契約書で決めているので、勝手なことはできないから大丈夫。」とか言われていませんか?

確かに、契約書にその記載があるのなら良いのかもしれませんが、それはあくまで当事者同士での話です。

第三者から見れば、そんなことは関係ありません。

その事実が登記されていないのなら、第三者に対する対抗要件が発生しないのです。

しかも、その対象の面積は、太陽光パネルが設置されている部分(範囲)に限りません。

土地の登記簿に賃借権が設定されていたとしたなら、第三者からすれば、その賃借権は、土地の面積の全てに及んでいることになります。

もし、土地の所有者が、太陽光パネルを設置していない部分は、新たに別の事業をしたいと考えても、登記簿には、土地の全体に太陽光発電関連の賃借権が付いているので、ますはこの問題を解決する必要があります。

結果として、将来的に土地の充分な有効活用に繋がらないという懸念が残ります。

確かに実態としては、一つの土地に複数の賃借人が存在するという事例はあります。

しかし、それほど不動産に関する知識がない一般の人の場合であれば、最初に太陽光発電事業をするときから、まずは土地を分筆し、貸す土地の面積を切り離して、そこにのみ賃借権を付けて登記おくべきだと思います。

権利を主張する上で第三者への対抗要件が備わっているので、安全だからです。

不動産において第三者に権利を主張するためには、登記にて公示しなければなりません。

賃貸借の譲渡・転貸は、また別の問題として考えるべきです。

土地を分筆するには結構お金がかかります。これも事実です。

一方、土地を貸すことによる事業収入をみれば、しかも太陽光パネルを設置するということは山間部や農業用地などの比較的地価の低いところですから、高い賃料は期待できないでしょう。

だからといって、土地を分筆せずに、安易に土地の面積全てに賃借権を設定することは、後で不都合が生じる恐れがあります。

それならいっそ、土地の全てを貸し出す契約にして、相当額の地代を設定した上で、その全面に太陽光パネルを設置するような事業内容にしてもらいましょう。

全面も要らないということになれば、分筆にかかる費用負担は、相手と交渉すべきだと思いますよ。

それも応じてくれないのなら、事業の計画を断念する、もしくは、別の事業者を探すぐらいの覚悟が必要だと思います。

まとめ

土地の一部を賃貸借や売買の対象とすることは可能ですが、第三者に対抗できません。

きちんと分筆の登記をして、権利を確保しましょう。

業者の言いなり、業者の都合で契約するのは、危険ですよ。

もちろん業者は重要事項として説明して納得を得たと主張するでしょうけど、一般の方が十分理解してリスクまで把握できるほどに説明を尽くしてくれますかね?

あとで登記簿を見てビックリ!なんてこともあるかもです。

土地や建物の所有者として、有効活用したいのは当然の思いです。

しかし、安易に貸し出すことは即ち、権利を手放すに等しい状況になることもあります。

大切な財産ですから、慎重に検討したいものですね。

Posted by synce-office