遺言執行者とは|遺言者の意思を確実に実現するための遺言書の作り方

2019年9月19日

遺言執行者とは、遺言者の財産につき、遺言者の内容に基づき、その効力を生じさせるために、手続きなどをする権限を委託された人物のことです。遺言執行者は、他の相続人の意思に関係なく、遺言書の内容の通りに不動産の名義変更や預貯金の解約などの手続きを行う権限を行使することができます。

遺言執行者=専門家はベストではない!?

公正証書遺言は形式に沿った内容として、遺言執行者を指定する場合が多いです。

この場合、遺言書において遺言執行者は誰にすべきだと思われますか?その答えは、遺言書を作成した目的から考えて、遺言執行者を誰にするのが適正なのか、妥当性なのかを考えることが必要です。

公正証書遺言では、遺言書の案の作成において専門家が関与することがよくあります。この場合、遺言書の案を作った士業者が遺言執行者に指定されているケースをよく見ますが、私はこれが必ずしもベストだとは思いません。ケースバイケースで判断すべきと考えるからです。もちろん、行政書士や弁護士、司法書士、税理士が遺言執行者になっていれば、相続が発生したときに、任せきりでOKですから、正直なところ相続人は手続きの面で、とても楽ではあると思います。

専門家は当たり前に自分を遺言執行者にしていることも?!

案を作るのは遺言者が依頼した専門家ですから、その案の中で自分(専門家)を遺言執行者として記載しておくことは出来ますよね。でもこれって、専門家が高額な報酬を得る目的であることを否定できますでしょうか?相続人ではない遺言執行者を指定することのメリットを、客観的に判断し、遺言者にきちんと説明して、それを遺言者が希望しているのなら問題ありませんが、どうも言い切れないような事案を、希に目にします。

私も専門家の一人なので、こんなことを言うと同業者から怒られそうです。「商売の邪魔をするな!」と。

でも、悪質とまでは言いませんが、利己主義的な専門家は、残念ながら存在します。

参 考 記 事

遺言書を作成する段階で、意図的に専門家である起案者が報酬を得られるように、儲かるように遺言書を作成できるのです。しかも、その金額(報酬)は自由のままに。

私たち士業者は備えておくべき資質として、また職業倫理の研修などで、依頼者のための職務執行を第一に考えることとして指導教育をされています。しかし実態は、個人の資質と倫理観に委ねられざるを得ないのです。よって遺言書についても、作成される専門家によって差が出るのが実情です。遺言書の内容が複雑で専門的になればなるほど、見えない形で関与した専門家がガッツリ儲かるような遺言内容にすることも実務上は出来てしまいます。こんなところで専門職のテクニックを使って欲しくないものです。

遺言執行者には絶対的な権限が与えられる

遺言執行者を第三者にしていたばかりに、相続人にとって不利益や不都合な事態が起こりかねません。遺言書の案の作成者=遺言執行者であれば、その人物の” さじ加減ひとつ”で遺言の内容を設定することが出来てしまう恐れがあります。これって、ちょっと怖くありませんか?

遺言書の内容が、その専門家が大きな利益を得るような仕組みになっているなら大きな問題です。遺言執行者が指定されていると、手続きにおいて相続人は何も出来なくなりますから、金融機関で相続財産である預貯金の確認をしようにも、遺言執行者が優先される場合があります。それほど遺言執行者の権限は絶大で絶対的であると言えます。

民法改正で、遺言執行者の権限が明確に

民法(相続法)が改正されたことで、遺言執行者の権限がより強い形で法律に明記されました。遺言執行者の指定がある場合は、遺言の内容を実現するための手続きは、遺言執行者のみが行えることが明文化されました。これにより、遺言執行者自らが不動産の名義変更や預貯金の解約が、何ら不都合なくできます。ここに相続人が異議を唱える余地はありません。

専門家の資質を見極めましょう

もし、遺言書作成のサポートを専門家にお願いしたなら、その専門家が自らに権限が集中するように遺言書を作ることも可能で、その執行まで担う事態は危ういと言えなくはありません。遺言書の作成に関与した者が財産を報酬と言う形で搾取できるような仕組みを、遺言(案)作成者=遺言執行者であれば、成立させることができる余地があります。専門家に遺言書の作成をして、もし当たり前のように自らが遺言執行者となろうとするような士業者がいたとすれば、その可能性がなくはない、と思わざるを得ません。だって、必然性がないですよね。

遺言書執行者には、まず第一順位として相続人の誰かが就任することを検討する、それが望ましくない、もしくは遺言者が希望するのであれば第二の選択肢として専門家が就任するのが順当だと思います。遺言者の意思をすっ飛ばして、第二順位を提案する専門家は、良心的とは言えないと思います。

もし、初見の遺言書の案を見た時に、当たり前のように 遺言(案)作成者= 遺言執行者となっていれば、少なくとも、「遺言執行者が相続人ではないのは、なぜですか?あなた(士業者)がなるものなんですか?」と聞いてみましょう。 あくまで私見ではありますが、 そこに明確な答えを聞けなければ、その人にお願いするのは、やめたほうがいいかもしれませんよ。遺言書の作成をサポートした専門家が、「私が遺言執行者になれば楽ですよ」とか、「大丈夫ですから任せてくださいよ」なんて曖昧なことを言うようなら、遺言書の内容自体すら、本当に適正か怪しいものです。だって、遺言者の利益を最優先にするという意思が見えませんから。

遺言書を既に作られている方は、ぜひ遺言書の項目にある遺言執行者への報酬の記述を確認してください。相続財産の2%から5%ぐらいの数字になっていませんか?それを 財産目録から遺言執行者報酬を計算してみてください。 数十万~百万円になりませんか?その金額は、本当に必要な費用ですか?妥当と言える金額ですか? 妥当でない金額であっても、相続人は異を唱えることができません。 いわば、遺言者と遺言執行者による契約のようなものだからです。遺言書に書かれた金額を報酬として、払うほかありません。

一方、相続人である方が遺言執行者であれば、¥0ですよ。

もし相続の発生後において、手続きが煩雑で難しくて手に負えないと思われるのなら、遺言書に「遺言執行者は第三者にその権限を委任することができる」というような文言さえ記載しておけば、相続の発生以後に専門家に遺言執行(手続き業務)を受任してもらうよう、行政書士や弁護士、司法書士などに依頼することもできます。その際に、相続人がその受任者と報酬額の交渉をすればいいのです。これで十分ではないですか?

ぜひ遺言執行者が誰なのかの確認を!

遺言書を作成したいとお考えの場合、その意思を持ってらっしゃるのはご本人さんか、その子どもさんなどの相続人であることがほとんどです。もちろんご本人は、遺言執行者になれませんよね。だからこそ私は、相続人のうち最も多く財産を受けられる方、もしくは相続人の関係において最も中心となる”取りまとめ”的な存在の方が、その他の相続人さんを代表して遺言執行者となり、手続きをされるのが望ましいと思っています。遺言内容以上(以外)のことは、遺言執行者には権限がありませんから、他の相続人にとっても安心です。事実、私は遺言書作成の支援を何度もさせていただきましたが、私が遺言執行者になったことは、現時点では1件もありません。なる必然性が、ほとんどの場合でないからです。だから遺言者の方に丁寧にご説明をして、遺言執行者には相続人さんになってもらっています。それが余計な経費を抑制し、つまりは遺言者および相続人の利益になるはずです。

遺言書に疑問が生じればセカンドオピニオンを!

もう既に遺言書を作られた方で、不安に思われたなら、ぜひセカンドオピニオンも検討してみてください。

まとめ

遺言書は、いつでも何度でも作り直すことができます。

参 考 記 事

できれば何年かに一度は見直しをされることをお勧めします。

士業者選びは、本当に大事!まして遺言書の遺言執行者を専門家にしてあるのなら、本当に必然性があるのかを一度見直すのが良いかもしれません。

肩書きで士業者を選ぶのは、オススメできません。大事なのは人間性なのだと思います。

まあ大丈夫だろうと安易に任せて、あとで後悔したしても、お金も時間も、亡くなられた遺言者の気持ちも、もう戻ってはきません。

本当に信頼できる人に、自分の意思を託したいものですね。

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